北見市の夕暮れ。 冷え込みが厳しくなってきた公園のベンチで、古谷くんは項垂れていた。 手元にあるのは、ボロボロになった一通の「不動産査定報告書」だ。

古谷くん:「……また断られちゃった。近隣の成約事例も調べたし、公示地価だって計算に入れた。なのに、売り出して3ヶ月、内覧の予約すら一件も入らないんだ。不動部長(上司)には『お前の値付けが甘いんだよ!』って怒鳴られるし……。不動産の仕事、向いてないのかなぁ」

ため息をつきながら、古谷くんは会社から支給されたタブレットを無造作にタップした。画面には、最近インストールされたばかりの「R-BASE」という、まだ誰も使っていないアプリのアイコンがあった。

古谷くん:「なんだ?このアイコン?あーる・・・べーす・・・・? 」

その時だ。

アルビー:「……うーん。なまら、お腹が空いたべさ……」

古谷くん:「うわぁぁっ!? しゃ、喋った!? 誰!? どこ!?」

タブレットの画面から、丸っこい蜂のようなキャラクターが、フラフラと浮かび上がってきた。

アルビー:「……あ、君。美味しそうな『データ』を持ってるね。ちょっとだけ、味見させてよ(もぐもぐ……)」

古谷くん:「ちょ、ちょっと! それは僕が必死で作った査定書なんだから!」

アルビー:「(……ぺっ!)……うーん、不味い。なまら不味いべさ! この査定書、数字は並んでるけど、『嘘』しか書いてないよ?」

古谷くん:「嘘!? 失礼な! 僕はちゃんと、近所で去年売れた事例を参考にしたんだよ! 2,500万円。相場通りのはずだ!」

査定書に書かれない「消えた物件」の行方

アルビーは、呆れたように小さくため息をついた。

アルビー:「古谷くん。君が参考にしたその『売れた事例』、そのお家が売れるまでに**【何日かかったか】**調べたことはある?」

古谷くん:「え? 日数? そんなの、ポータルサイトの履歴には残ってないよ。売れたっていう結果さえ分かれば、それが相場でしょ?」

アルビー:「それが大きな間違いなんだ。ぼく、アルビーが食べている『R-BASE』のデータを見てごらん。北見市内で、君が査定した物件と同じ価格帯の家が、過去1年でどう動いたか、真実を教えてあげるよ」

アルビーがタブレットに触れると、画面に冷徹なグラフが浮かび上がった。

アルビー:「いい? 北見の今の市場では、売り出してから【最初の60日】で決まらなかった物件は、そのあと半年間、幽霊みたいに残り続ける傾向があるんだ。君が事例にしたお家は、実は1年かけて、何度も何度も価格を下げて、やっとの思いで2,500万円で売れた『疲弊した物件』だったんだよ」

古谷くん:「……え? 1年もかかってたの?」

「売れた価格」と「売れる価格」は違う

アルビー:「そう。不動産屋さんが持ってくる『成約事例』は、あくまで過去の結果。でも、今お家を売りたい人が知るべきなのは、【今の買い手が、何日以内にその金額を適正だと判断するか】という『時間の鮮度』なんだよ」

古谷くん:「時間の……鮮度……」

アルビー:「北見の買い手は、みんなスマホで毎日ポータルサイトをチェックしているよね。3ヶ月以上売れ残っている物件を見ると、彼らは直感的にこう思うんだ。『ああ、この家、まだあるな。きっと何か問題があるんだ。もっと安く叩けるはずだ』ってね」

古谷くん:「それじゃあ、僕が『相場です』って言った2,500万円は……」

アルビー:「売り主さんにとっては、一番選んじゃいけない『期待だけさせて、結局は家を腐らせてしまう金額』だったんだべさ……。あ、ごめん、つい力が入っちゃった。……だったんだよ」

読者のみなさんへ:アルビーの問いかけ

古谷くんは、自分の査定書を見つめ直した。 真面目に作ったはずの書類が、急に「売り主さんを苦しめる呪いの紙」に見えてきた。

アルビー:「ねぇ、古谷くん。そして、今このブログを読んでいる売り主さん。 査定サイトで出てきた『高い金額』を信じて、そのまま3ヶ月待ってみる。……それは自由だよ。でもね、不動産の世界には、【一度『売れ残り』のレッテルを貼られたら、二度と適正価格では売れなくなる】という怖いルールがあるんだ」

古谷くん:「……アルビー。じゃあ、どうすればいいの? 売り主さんは、損をせずに、でも早く、納得して売りたいだけなんだよ」

アルビー:「それはね……『価格』を見るのを一度やめて、『時間』をベースに戦略を立て直すことだよ。 ……でも、今日はもうお腹いっぱい。データの処理が追いつかなくて、回路が熱くなってきたべさ……(ぷしゅー)」

古谷くん:「あ! アルビー! 逃げるなよー!」


次回予告:第2話「“高く売れた事例”が、実はあなたを大損させる罠になる理由」

北見・オホーツク圏の不動産の「本当の数字」を知りたい人は、またこのブログを覗きに来てね。